猫つながり
いただいた10日までのネコづくし展のチケットを手にJR新快速で京都へ。
京都駅伊勢丹の7階、広大な子ども・ベビー関連のフロアです。20年以上前、とあるドールのテスト販売をさせてもらったことを思い出しました。惨憺たる結果だった悲しくも懐かしい記憶です。その隅っこに美術館「えき」KYOTO、鉄道博物館同様のJR西日本の文化事業だそうです。
ごろごろまるまるネコづくし
「Ukiyo-e猫百科 ごろごろまるまるネコづくし」展、展示室最初のディスプレイと展示室外のディスプレイのみ撮影OKで、展示作品は全面的に撮影NG。
パネル上で丸くトリミングされていたのは「風俗三十二相うるささう寛政年間風俗部分」、神戸市立博物館常設展示のパネルに描かれていた平相国清盛と同じく月岡芳年の作、幕末から明治中期にかけ、歴史絵、美人画、役者絵、風俗画、古典画、合戦絵など多種多様な浮世絵を手掛け、猫を描いた作品も多数。
芳年の師匠、歌川国芳の猫を描いた作品の数々が本展のメイン、猫の習性、美人画の中に猫たち、擬人化された猫たち、百点以上が展示されていたかと。国芳の猫好きはハンパなく、常に数匹〜十数匹の猫を飼い、絵筆をとる際も懐に猫を抱いたと伝わります。ねこのスリスリの様子とか布団の中に入ってくる様子を見て、子どもの時に学校から帰ると玄関で待ってくれていたトムさんのことを思い出しました。
ネコづくし、ネコさがしのディスプレイ。左から月岡芳年「東京自慢十二ヶ月六月入谷の朝顔新ばし福助」、歌川国芳「猫の当字なまづ」、歌川芳藤「志ん板猫のあきんどづくし」、歌川国利「志ん板ねこの世界」。それぞれに「個人蔵」と明記されており、本展の多くが個人蔵、撮影NGはやむを得ないところか。
歌川国芳「猫の当字なまづ」の「づ」はどうみても「川」に点々としか読めませんが、「川」は「つ」の変体仮名らしい。国芳の猫の当字は去年の夏に久保惣美術館のワークショップで「うなぎ」を刷らせてもらっています。
美術館「えき」KYOTOは自前のコレクションをもたない美術館でクンストハレと呼ばれるそうです。一方自前のコレクションを持つ美術館はクンストムゼウム。あべのハルカス美術館もクンストハレ、同じ近鉄グループでも大和文華館や松伯美術館はクンストムゼウム。クンストハレにも学芸員が在籍、一般に学芸員は収集・保管・研究・展示という4つの大きな役割を担う中、展示(企画立案)と研究に注力し、自前の作品がないからこそ、外部から魅力的な作品を集め、新しい切り口で紹介する、というプロデュース能力がより強く求められるそうです。
京都駅ビルの空中径路は3年前に歩いてます。3階まで下りて見上げた大階段。大阪駅の大屋根もいいけど、京都駅もグッドです。
受付でもらった展示目録です。ウェブにアップされていた展示品目録のPDFはこの簡易版ですが、懐石料理のお品書きみたいな目録に惹かれてやってきた次第。これにさらに一部の展示品の解説が付いてきました。
展示品は30点弱なのでひとつずつじっくり丁寧に鑑賞、写真NGだったものの意外と記憶に残っています。ただ目録と展示の順番は全然合致していなくて、展示室内を何度もウロウロ。
- 寄付(よりつき)掛物の近衛家伝来応挙筆馬耳東風は、展覧会のタイトルにもなっている掛け軸、円山応挙の意外な一面を感じさせる落ちついた墨絵。
- 本席花入は饕餮文觚(とうてつもんこ)、泉屋博古館や奈良博の青銅器館で見る中国殷代の細身の酒器が、茶席で実際に花入として用いられていたことが分かります。
- 本籍茶碗は加賀松岡家伝来大津鍵五所持金海猫掻(きんかいねこがき)は猫が爪で引っ掻いたような文様の白い茶碗。17〜18世紀朝鮮半島南東部の金海窯の産。これで美術館「えき」KYOTOと「猫」でつながりました。
展示作品ではなく金海茶碗・猫掻き手もどきを紹介するウェブページを見つけました。猫掻きだけでなく、切り欠きのある高い高台も特徴。 - 茶碗替の宗入作銘北海は下掲ポスターの写真。
- もうひとつの茶碗替の黒織部沓形は黒白で歪んだ五角形、どこに口をつけるべきか悩む茶碗です。その悩む客人の様子を古田織部が楽しんでいたのでは。
番外に大覗(おおのぞき)魯山人の銀彩は、双魚文四方平鉢、徳利、ぐいのみ。双魚文四方平鉢は30cm四方くらいの角皿、真ん中に20cmくらいの鮎らしきが描かれています。これに小さな鮎をのせると全く様にならない、何とも魯山人らしい平皿です。大覗とは茶道用語かと思いきや、壁際の展示ケースの他の展示品に対し、この魯山人作品は展示室中央の平ケースで、これを上から鑑賞するという意味と分かりました。
TVドラマの魯山人のかまど全4編の藤竜也さんや古川琴音さんのしっとりした熱演に感動、北大路魯山人全集・121作品も8割方ほど読んだところです。もっと痛烈に民藝運動を批判しているのかと思いきや、「私の作陶体験は先人をかく観る」という文章に民藝運動はイデオロギーで自らを縛っているのではという批判がなされていたものの、さほど攻撃的な内容ではありませんでした。ただこの全集全体を通して魯山人の馬耳東風や唯我独尊、傲岸不敵はふんだんに発揮されていて、嫌なジジイではあるものの、決して人に媚びへつらうことなく自由に食や美を謳歌し、自らも創り出していた何とも羨ましい奇才のジジイだったことは十分伝わってきます。
黒漆天舟萌生猫と鉄達磨。
北加賀屋で見たのとは別のヤノベケンジワールドにビックリ。これは中之島美術館へ行かずばなるまい。